小栗忠順(小栗上野介)について書かれた本は、大きく評伝・研究、小説、漫画の3種類に分かれます。
同じ人物を扱っていても、読んで分かることがまるで違います。
- 評伝・研究 … 何をした人かを、史料に沿って知りたいとき
- 小説 … 権田村で斬られるまでの42年を、物語として追いたいとき
- 漫画 … 前提知識ゼロから、幕末の位置関係ごとつかみたいとき
2027年の大河ドラマ『逆賊の幕臣』を見る前に1冊だけ選ぶなら、『小栗上野介』村上泰賢(平凡社新書/2010)が入口として扱いやすい本です。
評伝・研究で読む
史実として小栗忠順を知るための本です。9冊を挙げます。
| 評伝・研究 | 著者 | 出版社・レーベル | 刊行年 | ISBN |
|---|---|---|---|---|
| 『小栗上野介』 | 村上泰賢 | 平凡社新書 | 2010 | 978-4-582-85561-6 |
| 『小栗上野介忠順と幕末維新 「小栗日記」を読む』 | 高橋敏 | 岩波書店 | 2013 | 978-4-00-025888-3 |
| 『明治維新の敗者たち―小栗上野介をめぐる記憶と歴史』 | マイケル・ワート(野口良平訳) | みすず書房 | 2019 | 978-4-622-08811-0 |
| 『小栗上野介の生涯―「兵庫商社」を創った最後の幕臣』 | 坂本藤良 | 講談社 | 1987 | 4-06-203234-1 |
| 『小栗忠順のすべて』 | 村上泰賢編 | 新人物往来社 | 2008 | 978-4-404-03533-2 |
| 『小栗上野介』 | 市川光一 ほか | みやま文庫 | 2004 | ― |
| 『決定版 小栗上野介』 | 村上泰賢 | 平凡社新書 | 2026 | 978-4-582-86109-9 |
| 『小栗上野介の決断』 | 真殿知彦 | 三和書籍 | 2026 | 978-4-86251-672-5 |
| 『小栗忠順と幕末維新の謎がわかる本』 | 歴史の謎を探る会(編) | KAWADE夢文庫(河出書房新社) | 2026 | 978-4-309-48616-1 |
- 『小栗上野介』 … 菩提寺・東善寺の住職が書いた新書。まず1冊ならこれ
- 『小栗上野介忠順と幕末維新 「小栗日記」を読む』 … 本人が残した「小栗日記」を歴史学者が読み解く
- 『明治維新の敗者たち―小栗上野介をめぐる記憶と歴史』 … 「なぜ地元で顕彰され続けたのか」を追った海外の研究
- 『小栗上野介の生涯―「兵庫商社」を創った最後の幕臣』 … 経済史の側から小栗の仕事を追う
- 『小栗忠順のすべて』 … 論点ごとに複数の書き手がまとめた事典型
- 『小栗上野介』 … 群馬の郷土出版。全国の書店では見つけにくい
- 『決定版 小栗上野介』 … 副題は「隠された悲劇の幕臣」。2026年7月刊、定価1,100円(税込)
- 『小栗上野介の決断』 … 副題は「日本の近代国家をデザインした信念の幕臣」。2026年7月17日刊、定価2,090円(税込)
- 『小栗忠順と幕末維新の謎がわかる本』 … 2026年9月15日刊、定価968円(税込)。文庫で読める解説書
まず1冊なら平凡社新書
『小栗上野介』村上泰賢(平凡社新書/2010)は、小栗の墓がある東善寺の住職が書いた新書です。
新書なので分量が手ごろで、現地の視点が入ります。
同じ著者は『小栗忠順のすべて』村上泰賢編(新人物往来社/2008)も編んでいます。
こちらは論点ごとに複数の書き手が分担する事典型で、通して読むより引きながら読む本です。
2026年に出た新刊
2027年の大河ドラマに合わせて、2026年7月以降に小栗忠順を扱う本が3冊出ています。
上の表の下3冊(2026年刊)です。刊行日と定価は、各冊の説明に書いています。
『決定版 小栗上野介』は、上で挙げた2010年の『小栗上野介』と同じ著者・同じ平凡社新書の本です。
2010年の本との違い(どこが改訂されたか)は、版元の案内では確認できていません。
本人の日記から読む
『小栗上野介忠順と幕末維新 「小栗日記」を読む』高橋敏(岩波書店/2013)は、小栗が残した「小栗日記」を歴史学者が読み解いた本です。
人物像を後から評価した本ではなく、本人が書き残したものを土台にしている点が違います。
「なぜ顕彰されてきたか」を扱った研究
『明治維新の敗者たち―小栗上野介をめぐる記憶と歴史』マイケル・ワート(野口良平訳)(みすず書房/2019)は、小栗そのものではなく、小栗がどう語り継がれてきたかを追った研究です。
地元の顕彰活動、埋蔵金伝説、近代化の功労者という評価——それぞれがいつ、誰によって作られたのかを扱います。
小栗については、地元の顕彰会や保存会が出している資料が多く残っています。そうした資料は「事実」と「立場からの主張」が地続きで書かれていることがあるので、この種の研究書を1冊挟んでおくと、読み分けの助けになります。
※イラストと会話は、このサイトの案内役として人物の姿を借りたものです。実際の発言ではありません。
小栗忠順
わしを顕彰する側が出した書き物は数が多い。ありがたいことだが、確かめられた事実と、その立場からの見立てとが、地続きに並んでいることがある。読むなとは言わぬ。ただ、誰がどの立場で書いたものかを頭の隅に置いて読むことだ。
小説で読む
小栗忠順を主人公にした小説です。
| 小説 | 著者 | 出版社・レーベル | 刊行年 | ISBN |
|---|---|---|---|---|
| 『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』 | 佐藤雅美 | 岩波書店 | 2007 | 978-4-00-022477-2 |
| 『罪なくして斬らる 小栗上野介』 | 大島昌宏 | 新潮社 | 1994 | ― |
| 『日本大変―小栗上野介と三野村利左衛門』 | 高橋義夫 | 集英社文庫 | 1999 | ― |
| 『明治元年の逆賊』 | 池波正太郎 | ― | ― | ― |
| 『はんぱもの維新』 | 星新一 | ― | ― | ― |
| 『残光そこにありて』 | 佐藤雫 | 中央公論新社 | 2025 | ― |
| 『斬首ただ一人』 | 南條範夫 | 旺文社文庫 | 1986 | ― |
| 『斬刑』 | 中津文彦 | 徳間書店 | 1995 | ― |
刊行年やISBNが空欄のものは、短編や作品集の収録作で、単行本の書誌が定まっていないものです。
- 『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』 … 小栗が主人公の長編。文庫でも読める
- 『罪なくして斬らる 小栗上野介』 … 処刑までを正面から書いた長編
- 『日本大変―小栗上野介と三野村利左衛門』 … 小栗と、のちに三井を支えた三野村利左衛門を並べて描く
- 『明治元年の逆賊』 … 短い作品で小栗の最期を扱う
- 『はんぱもの維新』 … 小栗を主人公にした異色作
- 『残光そこにありて』 … 大河の発表と近い時期に出た新しい小説
手に入りやすさで選ぶなら『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』佐藤雅美(岩波書店/2007)です。
角川文庫 2009年(ISBN 978-4-04-392502-5)で文庫にもなっています。
いちばん新しいのは『残光そこにありて』佐藤雫(中央公論新社/2025)です。
司馬遼太郎は小栗をどう書いたか
「小栗忠順 司馬遼太郎」で探している人が多いのですが、司馬遼太郎は小栗を主人公にした小説を書いていません。
小栗が出てくるのは、次の2冊です。
| 司馬遼太郎の本 | 著者 | 出版社・レーベル | 刊行年 | ISBN |
|---|---|---|---|---|
| 『明治という国家』 | 司馬遼太郎 | 日本放送出版協会 | 1989 | 4-14-008668-8 |
| 『十一番目の志士』 | 司馬遼太郎 | ― | ― | ― |
評価としてよく引かれるのは『明治という国家』司馬遼太郎(日本放送出版協会/1989)のほうです。
司馬はこの本で、小栗を「明治国家の父の一人」と書きました。
明治の近代化を作ったのは明治政府だけではなく、その土台には幕府側が用意したものがある——という見方です。小栗の評価が戦後に見直されていく流れの中で、いちばん広く知られた一文になりました。
もう1冊の『十一番目の志士』司馬遼太郎は幕末を舞台にした小説で、小栗は登場人物の一人です。
司馬遼太郎の幕末小説
「司馬遼太郎の幕末小説から入りたい」という人向けに、幕末を扱った主な作品を並べます。
いずれも小栗が主役の本ではありません。
| 作品 | 発表 | 版元 |
|---|---|---|
| 『竜馬がゆく』 | 1963-1966年 | 文藝春秋新社 |
| 『燃えよ剣』 | 1964年 | 文藝春秋新社 |
| 『酔って候』 | 1965年 | 文藝春秋新社 |
| 『最後の将軍』 | 1967年 | 文藝春秋 |
| 『峠』 | 1968年 | 新潮社 |
| 『世に棲む日日』 | 1971年 | 文藝春秋 |
| 『花神』 | 1972年 | 新潮社 |
| 『胡蝶の夢』 | 1979年 | 新潮社 |
小栗と同じ時代を、別の人物の側から見ることになります。
『竜馬がゆく』なら坂本龍馬、『燃えよ剣』なら土方歳三、『花神』なら大村益次郎です。
漫画で読む
活字が重いときは漫画から入るという手があります。
| 漫画 | 著者 | 出版社・レーベル | 刊行年 | ISBN |
|---|---|---|---|---|
| 『天涯の武士』 | 木村直巳 | リイド社 | ― | ― |
| 『猛き黄金の国』 | 本宮ひろ志 | 集英社 | ― | ― |
| 『風雲児たち 幕末編』 | みなもと太郎 | リイド社 | ― | ― |
| 『小栗忠順物語〜ボクのひいひいおじいちゃん〜』 | 小栗かずまた(監修:村上泰賢・大石学) | 集英社 | ― | ― |
- 『天涯の武士』 … 小栗を主人公にした漫画
- 『風雲児たち 幕末編』 … 幕末の全体像をギャグを交えて追う長編
- 『小栗忠順物語〜ボクのひいひいおじいちゃん〜』 … 子孫の漫画家が描いた小栗
子孫の漫画家が描いた小栗
『小栗忠順物語〜ボクのひいひいおじいちゃん〜』小栗かずまた(監修:村上泰賢・大石学)(集英社)は、小栗忠順の玄孫にあたる漫画家が描いた作品です。
『最強ジャンプ』全5回連載で、副題の「ボクのひいひいおじいちゃん」はそのままの意味になります。
この作者は、2005年の「よこすか開国祭」で使われたキャラクター「オグリン」のデザインも手がけています。
吉村昭に小栗を書いた本はあるか
「小栗上野介 吉村昭」で探している人がいますが、吉村昭の著作一覧に、小栗忠順を扱った作品は見当たりません。
吉村昭は幕末をよく書いた作家で、『桜田門外ノ変』『生麦事件』『天狗争乱』『彰義隊』『幕府軍艦「回天」始末』などがあります。
幕末の幕府側を書いた作家として名前が近くに並ぶため、小栗の本もあるはずだと思われているのかもしれません。
小栗の最期を小説で読みたいのであれば、上の「小説で読む」の一覧から選ぶことになります。
手に入りにくい本もある
『小栗上野介』市川光一 ほか(みやま文庫/2004)は、群馬県の郷土出版であるみやま文庫から出ています。
全国の書店の在庫には並びにくく、県外では図書館か古書で探すことになります。
同じことは、顕彰会や自治体がまとめた資料集にも当てはまります。群馬県内の図書館、または東善寺の遺品館・記念館で現物にあたるのが早い場合があります。
よくある質問
小栗忠順の本で、最初に読むならどれですか
分量と入手しやすさで選ぶなら『小栗上野介』村上泰賢(平凡社新書/2010)です。小説から入りたい場合は、文庫のある『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』佐藤雅美(岩波書店/2007)があります。
司馬遼太郎は小栗忠順の小説を書いていますか
主人公にした小説はありません。『明治という国家』という評論のなかで小栗を高く評価し、『十一番目の志士』に登場人物として出しています。
小栗上野介と小栗忠順は同じ人ですか
同じ人です。「上野介」は官職名で、本の表題も両方が使われています。
そのため、書店や図書館で探すときは両方の表記で検索したほうが取りこぼしません。
ドラマの原作になる本はありますか
原作が公表されたという発表は見当たりません。
2025年3月3日の制作発表で明らかにされたのは、主演が松坂桃李、脚本が安達奈緒子であることでした。
上に挙げた本は、いずれもドラマの原作ではありません。
電子書籍で読めますか
作品によって扱いが違います。刊行が古いものや郷土出版のものは電子化されていないことが多いので、各電子書店で書名を検索して確かめてください。
読み終えたら、ドラマ本編の見方もあわせてどうぞ。
書名・著者・出版社・刊行年・ISBNは各版元の書誌情報によります(2026年8月25日確認)。
2026年刊の3冊は、版元(平凡社・三和書籍・河出書房新社)の書誌ページで2026年10月7日に見直しています。
版元品切れや改版で、書誌が変わっていることがあります。購入前に版元と書店で確かめてください。